華の欠片




縁側を歩いていると、自分の部屋の襖が

空いているのが見えた。

きっと椿が居るのだろう。


部屋の前まで行くと椿が何やら机に手を

つき、零してしまったであろう墨を懸

命に拭いて居た。


その墨を拭く椿の顔色はどこか青白く、

とても辛そうに見える



俺が居ない間に何があったか知らないが

ここまで顔色が優れないのはつがここに

来た時以来だろうか....


椿がここに来て一月、二月程たつ。



椿は俺が片づけを手伝うと言うとそれ

を断ってふらふらと井戸へと向かおうと

した。



まったく............. 。

少しは頼って欲しいものだ。


きっと椿の事だ、迷惑を掛けまいと必

死なのだろう。


俺は横を通り抜けようとした椿の手を

軽く自分の方に引き寄せた。



すると、ふらふらの椿はあっさりと俺の

方へ倒れかかってきた。


ちょうど椿の今の体制は俺を見上げるよ

うな姿勢になった。

まだ状況を上手く整理出来て居ない椿は

未だぼんやりと俺を見上げてくる。



そこからの行動は本当無意識だった気が

する。



熱っぽいと感じ、俺は椿の額に自分の額

を合わせたのだ。



俺は今まで女にこんな事した事などない。

俺は何をしているのだろう.....


熱があるであろう椿はいつの間にか俺の

腕の中で眠りについていた。

そうとう疲れが溜まって居たのだろう。



布団を敷き、椿をそこに寝かせると椿が

やりかけた墨の片付けを終え、俺は副長

の部屋へ直行した。


副長なら椿が何故ここまで疲労困憊なの

か理由を知ってると思ったから。
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