華の欠片


ふと、自分の肩が見知らぬ男にぶつかっ

た。



「おぃ、小僧。どこ見て歩いてるんだ?

ぁあ?」


少女は明らかに面倒草そうな顔をしてそ

の場を立ち去ろうとするが、男に行先を

拒まれる。




「さっきので、骨折れたんだけど⁉慰謝

料払えよ」


ふっ、当たり屋のおっさん....

いや、服の紋からして長州藩士か。


「あなたの骨は随分と弱くていらっしゃ

いますね。

そんなに簡単に折れてしまうのならば、

私がもっと沢山バキバキに折って差し上

げますよ。」


少女は淡々とした様子で冷めた口調で言

い放った。



「ガキの癖に生意気な!」



男は腰の刀に手を掛けた。

そして刀を抜くと少女に襲いかかってき

た。




「随分と短気な奴だな。......しょうがな

い。相手してやる...

………

…こいよ」




少女は男の一撃を見事に交わすと、抜刀

する。そして、目にも止まらぬ早さで男

の背後に回り一撃をかました。



肩から腰にかけて大きな傷が刻まれてい

た。

男はまだ生きているが、既に虫の息……

もうじきあの世行きだろう。


「.......皮肉な物だな.....」




弱り切った男を冷徹な目で見下ろしてい

る少女。

その冷徹な目はとても花の様な綺麗な色

をしているのに、曇り闇のような深さが

あったという。
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