片想いのカタチ *短編集*
「にがっ……」
噛んだチョコから苦い味がした。
「――どうして、苦いの?」
苦いからなのか、健人と他の子が仲良さそうだからなのか涙が伝った。
涙は視界を滲ませた。段々と溢れてきた。
「ここあ!?」
話に夢中だったはずの健人に名を呼ばれた。
「……」
私は、プイっと背を向けた。そして、制服の裾で涙をごしごし拭った。
でも、涙を拭っても溢れてきた。だから、必死に涙を止めようとした。
そうしないと、健人がこっちに来るから。泣き顔を見られてしまう……。