片想いのカタチ *短編集*
――コンコン
その時、私の病室のドアを誰かがノックした。
「はーい」
私の病室は個室だ。そして、今は夜の11時。
この時間に訪ねてくるのは、きっとあの人くらいだ……。
「花純ちゃん、調子どう?」
ガラッとドアを開けて部屋に入って来たのは、私の担当医の寺本直輝(テラモトナオキ)先生。
私より7つ年上で、今年24歳。
「いいですよ」
先生は、1日に1回この時間帯に私の病室を訪ねてくる。
先生が来ることは、病院生活で唯一の楽しみだ。
「そっか、それはよかったよ」
先生はほっと息をついて、ベット近くの椅子に座った。何だか少し疲れてそうに見えた。
「先生、疲れてる?」
「うーん。そんなことないよ」
そう言って、苦笑いした。
「疲れてるなら、無理して来なくてもいいのに」
私は、先生の顔を覗き込んだ。