ZERO 深淵が謡うセレナーデ
突然顔を近づけられて意味不明な事を言われたら誰だって戸惑うものだ。「ご、ごめんなさい。突然変な事言って、あの私は・・・・くしゅん」
「ぷっ(笑)」
無理もない今は11月、秋も終わり一年でもっとも寒くなる冬の季節だ。よく見ると彼女の服装はどこかの国の民族衣装のように見える。別に露出が多い服ではなさそうだが、生地は薄く冬にこの服を着るのは自殺に等しい。この寒空の中その恰好で倒れていれば体も冷えるというものだ。その証拠に彼女の肩は少し震えている。
「あの~何か話しがあるのなら家の中に入ります?外は寒いですし」
この季節に寒そうな恰好をした女の子が家の前で倒れていて凍えている姿を見たら助けてあげたいと思うものである。怪しい恰好をした見知らぬ女の子を家の中に入れるのはどうかと思うが、苦しんでいる人を見ると黙って見ていられない性格なのだ。友達からお人よしの称号が付けられるほどに僕はお人よしなのだ。本人にはその自覚はないのだが。
「そうしてもらえると助かります」
彼女は恥ずかしそうにしながら答えた。






それから二時間後・・・・・・・・・・・・・・
「きょうや~、お腹空いた。何か食べさせて!」「ねぇ、帰る気はないの?」
「うん、だってここがボクの家だもん!それとも何か不満でもある?」
「い、いえ、どうぞご自由にしてください」
「ふふ~ん、それでよろしい!」
はぁ~どうしてこんな事になってしまったのだろうか。今思えばあの時に直感した思いは正しかったのかもしれない。
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