再愛 ーサイアイー
「どうして、お礼なんか言うのよっ」
マンションのセキュリティを通り、エントランスへと行くと、私は足を止めた。
振り返った先に、もう彼の姿はない。
「嫌いなんて、嘘よ……」
嫌いになれるわけがない。
こんなにも大好きだったのだから。
携帯を開き、今まで保護してきた彼とのメールをチェックする。
初めて出会った時の彼は、
まるで灰色の石達の中に、一つだけ間違って入ったダイヤモンドのようだった。
輝いているからこそ、近付きにくい。
憧れるからこそ、触れられない。