サヨナラのしずく
この空気に耐えられなくなって、先に口を開いたのはあたしだった。





「やっぱり帰る」




そう言って立ち上がろうとしたあたしの腕を俊平が掴み抱き寄せる。



俊平に抱き寄せられたあたしの顔の前には俊平の顔がある。



俊平はあたしの後頭部に手を回し、自分へと近づけようとする。



その間も俊平はずっとあたしの目を見ていた。





「嫌っ!」





あと少しであたしの唇と俊平の唇が重なりそうになった時、あたしは拒絶した。



俊平は強要せずにあたしの後頭部からゆっくりと手を離した。



だけど腕はあたしを抱き締めたままだ。




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