サヨナラのしずく
わかってる。


俊平は悪くないって。



これはただの嫉妬だって。




なのに俊平は、あたしを抱き締める腕の力を緩めて「悪かった」と謝ってきた。




「ギュってしてて」


「あ?」


「腕の力緩めないで」





俊平はちょっとだけ鼻で笑って「すげぇ我が儘」って言い、さっきよりもギュってあたしを抱き締めてきた。



あたしはそれに安心感を感じた。





「心配しねぇでもお前はナオに似てねぇよ。ナオはこんな我が儘言わねぇ」


「ナオさんが忘れられない?」




もし忘れられないと言われても受け入れなきゃいけないと思った。



俊平がさっき言ったように、あたしを大事にしてくれているのはわかっているから。





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