サヨナラのしずく
そしてあたしの頭に手を伸ばし、自分の胸へと押し込めた。





「ここで捨てられたせいか、繁華街にいると落ち着く。ここは俺の故郷みてぇなもんだ」


「あたしもここが落ち着く」




あたしは俊平の腕の中が一番落ち着く。



産まれた場所でも親でもないけれど、温かいここが一番だ。





「俊平」


「ん?」


「親に捨てられたこと恨んでる?」


「顔も知らねぇ人間を恨めねぇよ。それにお前にも出会えて、俺の人生さほど悪くもねぇしな」




あたしの人生も悪くないかもしれない。



俊平に出会えただけで幸せな人生だよ。




あたしからも俊平に腕を回してギュっと抱きついた。





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