サヨナラのしずく
「小笠原ゆきって綺麗だよな」


「…うん」




何も知らない俊平はテレビに映るあの人を話題に出す。




「ちょっとお前に似てる」


「……母親だからね」


「…………」





俊平は驚いたのか、テレビに向けていた視線をあたしへと向けた。




「この人があたしを産んだんだよ」




あたしは俊平の視線に気づいていたけど、テレビに映る母親を見て話を続けた。



今まで誰ひとりとして話したことない話。





「この人が二十歳のとき、世間には内緒であたしを産んだらしい」


「…………」


「だからあたしはお祖母ちゃんに育てられた」




母親なのに一緒に暮らした記憶もない。



ただ毎年誕生日にプレゼントが贈られてきたくらいだ。




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