サヨナラのしずく
だけどあたしは他人に優しい言葉のかけ方を知らない。




それどころか本当は目の前で泣いている人のことより自分のことを考えていた。




「……マミ?」




お風呂から出てきた俊平はマミさんの存在に気づいて名前を呼んだ。




「お前、ここで何してんだ?」


「……許さない!自分だけお姉ちゃんを忘れて幸せになろうなんて許さないから!」




マミさんは俊平に向かって泣きじゃくってそう言った。



あたしは俊平をじっと見ていたけど、俊平はあたしを見ないでそのままマミさんの頭を撫でる。



嫌だ…。
あたしの目の前でそんなことしないで!



そう思っても、俊平があたしを見てくれないから言葉にできない。





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