サヨナラのしずく
俊平を困らせることは分かっていた。



だけど嫌なものは嫌で、我慢してしまえばあたしは本当の気持ちを口にできない人間になってしまいそうだと思った。





「…悪いな。すぐ戻る」



俊平はあたしの顔を見ずにそう言うとマミさんと出ていってしまった。




ドアの閉まる音と共にあたしの瞳から止めどなく涙が溢れてきた。




俊平はあたしよりマミさんを優先させた。



いや、マミさんじゃなくナオさんかもしれないけど。



だけど、前にあたしを優先してくれると約束してくれたのに俊平はその約束を破った。





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