サヨナラのしずく
これを裏切りと言うのかはわからないけど、あたしは裏切られたと思った。



心底信じていた俊平に裏切られたと思った。



あたしはご飯の支度途中だったことも忘れ、ベッドにうずくまり泣き続けた。



そしてしばらくして俊平が帰ってきて、あたしのいるベッドへとやってきて座った。



背中を向けているあたしには俊平の表情は見えないから何を考えているのかはわからないけど、タバコに火をつけたのは音と匂いでわかった。



俊平はため息なのかタバコの煙を吸出してるのか深い息をはいた。





「………雫」


「…………」




俊平に名前を呼ばれてもあたしは返事を返さなかった。



そして部屋には俊平のタバコを吸う息づかいと、あたしのすすり泣く声だけがしていた。





「……別れてくれるか?」




たったこの一言であたしの涙はまた止めどなく流れてきた。





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