サヨナラのしずく
「しばらくここには帰らねぇから好きに使え」




最後にそう言って、俊平は部屋を出ていった。



それからあたしは何もする気にも考える気にもなれず、ただボーッと死んでいるかのような数日を過ごした。



作りかけていた料理はいつの間にか腐っていた。



あたしはまともに何も口に通さずこのまま死ぬのもいいかなと思っていた。




死んだら、あたしも少しは俊平の心に残る?



どんな形でも俊平の心を掴んで離さないナオさんがうらやましいと思った。



ナオさんはきっと命を捨てることで俊平の心を自分のものにしたかったんだ。




< 242 / 358 >

この作品をシェア

pagetop