サヨナラのしずく
あたしのことは忘れて
冬から春へ変わった。



そして、また冬がきた。



もうすぐタクミさんがいなくなって1年がたつ。



街は来週に迫ったクリスマスのせいで何だか浮かれている。



あたしはそんな世間とはかけ離れていて、今日も病院へときていた。







「……雫?」




病院内を歩いていると名前を呼ばれ、あたしは時間が止まったようにピタリと動きか止まった。




こんな所で今さら会うなんて思っていなかった。



もう会わないって決めた人なのに…。



ずっと会っていなくても声を聞いただけで、誰だかわかった。




「……俊平」


「お前、どっか悪いのか?」




俊平は久しぶりに会ったのに挨拶じゃなくて、そんなことを聞いてきた。




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