サヨナラのしずく
「ううん。あたしじゃないよ」


「そうか。元気か?」




俊平は出会った頃と変わらず、あたしを心配そうな目で見てくる。




「うん、元気」



「そうか」




胸の奥がキュウッとなるのを感じる。



だけど、唾を飲み込んでさよならを言うために口を開いた。




「……じゃぁ、ね」


「……ああ」




あたしは俊平を通り越してエレベーターの方へと向かい出した。




「雫!」




再び名前を呼ばれて振り返った。



あたしは震える手をギュッと握って俊平を見た。



手は震えるのに意外にも頭の中は冷静だった。




俊平を見て、髪が伸びたなとか顔は変わっていないなとかそんなことばかり考えていた。





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