サヨナラのしずく
伸ばせばよかったって…。


1度だけでも手を握ればよかった。



今はその後悔があたしを攻め立てる。




「俊平は悪くないよ」


「お前も俺に出会わなければよかったな」




俊平?


俊平がこんな風に言うなんてどうしたの?



卑屈になるのはいつもあたしで、俊平はいつも強かったのに。




「ほんとに悪かったな」




そう言って、俊平は帰ろうとする。




「俊平」




あたしは名前を呼び引き留めた。


なんだか俊平が消えてしまいそうな気がした。




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