サヨナラのしずく
家の中へ入り、紙袋の中の物を出した。



パティシエになることは夢ではない。



だけど、パティシエになることを目標にして生きていくのは悪いことじゃないかもしれない。



いつかユウカさんが話してくれた夢を羨ましいと思った。



あたしも夢がほしいと思った。




「学校行くのか?」




真剣に見ているあたしの横で俊平が聞いてきた。




「わかんない」


「俺、お前の作ったケーキ食ってみてぇな」


「甘いの嫌いなのに?」




前に俊平は甘いものはあまり好きじゃないと言っていたことがあった。




「お前が作ったら食うよ」




たったこれだけの事でパティシエになろうと思った。



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