サヨナラのしずく
俊平の顔を見ようと振り向こうとするあたしを俊平はあたしの頭を押さえて阻止した。





「半年くらい前に脳腫瘍が見つかって、手術もできない位置でもう手遅れだって言われた」




脳腫瘍?手遅れ?


嘘だ!だって、今も普通に話してるのに。




「死ぬって分かってどうしてもお前に会いたくなった。だからお前の母親が入院してる病院で世話になることにした」




俊平の話していることが全然わからない。



だけど最後まで聞かないといけないと思った。



だって俊平は今までずっと話せずに苦しんでたと思うから。





「そしたら、あの日偶然お前に会えて嬉しかった。」



嬉しかったなんて言ってるけど、あたしはあんなことを言ってしまったんだよ?


病気のこと知らなかったとはいえ、俊平はどんな気持ちだったんだろう。





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