サヨナラのしずく
「それから、あの病院でお前を毎日見てた」




毎日?

だから、あの時あたしが拉致された時も助けにきてくれたの?




「見てるだけのつもりだったけど、あいつらがお前を連れ去って、お前は母親の死に目に会えなくて、謝りたいと思った」




それで謝りにきてくれたんだ。




「でも本当はただお前に会いたかっただけだった。お前がそばにいてって言ったとき、俺もいつかはいなくなるのにそばにいたいと思った」




俊平の腕に自分の腕を重ねてギュッと力を込めた。




「こうやってお前を悲しませるって分かってたのに、俺の我が儘で悪かったな」


「俊平」


「ん?」




名前を呼んだだけなのにあたしの声は震えていた。




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