サヨナラのしずく
1階と違って少しは音量は小さいけど、それでも音楽ははっきりと聞こえてくる。



あたしは言われた通り、入り口近くのソファーに腰をおろした。



膝の傷口を見るといつの間にか血は止まっていた。




「大人しく待ってたみたいだな」




戻ってくるなり男はそう言ってあたしの足下へと膝をついた。




「ちょっと我慢しろよ」



救急箱を持って戻ってきた男は傷口を消毒し始めた。




「痛むか?」


「大丈夫」




消毒液が少し滲みるけど、そんな痛みは大したことない。




あたしには痛いと口にするほどの痛みではなかった。





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