サヨナラのしずく
「夢なんか見てないよ」


「いや、まじで。お前寝たと思ったら突然泣き出したんだよ。最初起きてんのかと思って見に行ったら寝てて、俺が大丈夫かって聞いたら俺の名前呼んできた」





泣いてた?


あたし、また泣いてたんだ…。



たまに朝起きたら涙が流れていたりとかしていた。



でも夢を見ていたのかどうかさえ覚えていない。



だからあたしはその涙の原因を知らない。





「泣いてるのにほっとけねぇだろ?だから横で寝ただけだ」




俊平はそう言ってタバコの火を消した。




「もっかい寝るぞ、こい」




もう一度布団の中に全身を沈めた俊平は左腕を広げてそう言った。





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