サヨナラのしずく
「あたし帰る」


「俺はまだ眠ぃんだよ。ほら、こい」




そう言った俊平に腕を引っ張られ無理矢理隣に寝転ばされた。



逃げようにも腕を回されて逃げられない。




「観念して寝ろよ」



ちょっと抵抗したあたしに俊平はさらに腕の力を強めてそう言った。




「だってもう眠たくない」


「じゃ、寝転んどけ」




諦めたあたしは抵抗をやめておとなしくなった。



「……雫」


「な、なに?」




いつもあたしのことを“お前”としか呼ばないのにいきなり名前で呼ぶもんだから驚いた。





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