溺愛王子とヒミツな同居
「まり……や……?」
栞に呼ばれて、自分のクラスに戻ろうとしていた私の耳を、男の子のそんな声が掠めた。
空耳かと思ったけど、振り向くとさっきの背の高い彼と、ピカちゃんと呼ばれたあの軽そうな男の子がいるだけ。
呼ばれた気がしたけど、気のせいかな……。
すると、横から強い力で手を引っ張られた。
「ぅわ……っ!?」
「まりや、急ぐぞ。谷先に怒られる!」
私の返事も聞かずに早歩きして戻る栞に、何とか歩幅を合わせる。
「もう~。栞が見に行こうなんて言うから」
じゃなきゃ、こんな慌てることもなかったかもしれないのに。
つい溜め息が口から出た。
「でも、まりやもまんざらじゃなかったじゃん?」
ピタリと歩くのを止めて、1年5組の前でそんなことを口にする栞。