溺愛王子とヒミツな同居



廊下から教室にこだまする女子達の黄色い声。



その名前を聞いただけで、私の胸は高鳴る。



いつもよりも大きく音を立てる胸は、大翔君の姿を捉えただけで一層大きくなる。



「毎日のことながら、すんごい人気だねぇ。まりやの想い人は。

あれだけ騒がれてるのに、眉一つ動かさず顔の筋肉保っていられるなんてさすがだわ」



顔の筋肉って……。



栞らしい表現の仕方につい笑いそうになるけど、そんな感心した声を耳にしながら、いつも通りクールに教室に入ってくる大翔君を自然と目で追ってしまう。



その後ろをいつも宮内君が愛想を振りまいて歩いてるのが、あの2人の朝のスタイルになりつつある。



「まりや、忘れ物」



注目を集める中、自分の席につく途中で大翔君がごく自然に、それが当たり前だと言いたげに、私の机の上に可愛らしいピンクの袋を置いた。



私は当然のこと、クラス中の男子や女子、それに大翔君を一目見ようと集まっていた他のクラスの子たちも、そのあまりにも自然すぎる行動に目を剥いていた。



「ちょっと、今の何……?」



「藤沢って、松坂とどういう関係?

あいつって確か女嫌いじゃ……。でも今、藤沢のこと下の名前で呼んだよな……?」



静まり返っていた教室がまた騒がしくなり始める。



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