溺愛王子とヒミツな同居



「お帰り。遅かったな」



玄関に入るなり、大翔君がそこでずっと待っていたのか、玄関の壁にもたれて立っていた。



「あ……、ただいま。少し寄り道してたから」



寄り道なんて嘘ついちゃったけど、谷山先生に呼び止められてたなんて、本当のことは言えなかった。



大翔君に隠し事してるみたいで、何だか嫌だけど内容をちゃんと理解してないのに、話をすることはできなかった。



今日は、朝からまともに喋ってなかったから、変に緊張する自分がいる。



「夕飯できてるぞ。着替えてこいよ」



「う、うん。すぐに着替えてくる」



顔を真っ直ぐに見られなくて、足早に横を通りすぎると2階へと上がっていく。



部屋に入ってからも、ぼんやりと谷山先生の話を思い出して考えてみたけど、結局何一つ答えなんて出てこなかった。



着替えを済ませて、1階に下りると美味しそうな匂いが鼻を刺激する。



「わぁ、美味しそう! これってジャーマンポテト?」



「当たり。おばさんにまりやが好きだって聞いたから作ってみた」



大翔君……私のこと考えて作ってくれたんだ。



朝からロクに話もしなかったのに、ちゃんと考えてくれたんだね。


< 203 / 437 >

この作品をシェア

pagetop