溺愛王子とヒミツな同居
「お帰り。遅かったな」
玄関に入るなり、大翔君がそこでずっと待っていたのか、玄関の壁にもたれて立っていた。
「あ……、ただいま。少し寄り道してたから」
寄り道なんて嘘ついちゃったけど、谷山先生に呼び止められてたなんて、本当のことは言えなかった。
大翔君に隠し事してるみたいで、何だか嫌だけど内容をちゃんと理解してないのに、話をすることはできなかった。
今日は、朝からまともに喋ってなかったから、変に緊張する自分がいる。
「夕飯できてるぞ。着替えてこいよ」
「う、うん。すぐに着替えてくる」
顔を真っ直ぐに見られなくて、足早に横を通りすぎると2階へと上がっていく。
部屋に入ってからも、ぼんやりと谷山先生の話を思い出して考えてみたけど、結局何一つ答えなんて出てこなかった。
着替えを済ませて、1階に下りると美味しそうな匂いが鼻を刺激する。
「わぁ、美味しそう! これってジャーマンポテト?」
「当たり。おばさんにまりやが好きだって聞いたから作ってみた」
大翔君……私のこと考えて作ってくれたんだ。
朝からロクに話もしなかったのに、ちゃんと考えてくれたんだね。