溺愛王子とヒミツな同居
「無理だって言ったら無理。これ以上付き合ってられないから帰るぞ」
粘られても困る俺は、強制的に会話を終わらせて祥吾に背を向けて歩き出した。
「……怪しいなぁ……なーんか隠してるっぽいよね。
慌ててるつもりはないんだろうけど、従兄弟である俺の目をごまかせると思ってんのかな」
口元に笑みを宿して、俺の背中を見送っていた祥吾が嵐を運んでくることになるなんて、思いもしなかった。
「ただいま」
何とかやり過ごしたと思っていた俺は、先に帰って夕飯の支度をしていたまりやに声をかけた。
「お帰りなさい。もうすぐご飯出来るよ」
エプロン姿が少しずつ板についてきたまりやが、おたまを持ってにっこりと出迎えてくれた。
「今日は何?」
「今日はね、大翔君の好きなもの。この間、レシピ教えてくれたから作ってみたんだけど」
同居するようになってから、料理を始めたまりやに時々だけど、作り方を教えてほしいと料理のレシピを聞かれたことが何度かあった。
思い出せば、俺が好きなものを聞いてきたり、食べたいものを聞かれたり……
熱心に聞いてきて、最近頑張ってるなって思ってはいたけど、こういうことだったのか。
少し不安そうな顔をするまりやの頭に手を乗せる。
「美味いこと間違いないな。俺が教えたんだし」
意地悪っぽく言うと、まりやが眉根を寄せて難しそうな顔を見せた。