溺愛王子とヒミツな同居
「これの出番なくてよかったよな」
これと持ち上げた胃薬に、まりやが慌て始める。
「だ、だって……大翔君に教えてもらったけど、作ったのは私だしもしお腹の調子が悪くなったらと思って……」
「料理を始めた日数はまだ短いけど、毎日確実に上手くなってるんだから、もっと自信持て。
俺が言うんだから、間違いない」
不味いよりは美味いものの方が誰だっていいに決まってる。
だけど、それよりも俺のことを想って作ってくれたまりやの気持ちが本当に嬉しかった。
沢山ある料理の中で、俺の好きなものを選んで作ってくれたこと、そのことが心の底から堪らなく嬉しかったんだ。
大満足で2人して夕飯を平らげ、後片付けをしている俺の隣にまりやがやってきた。
「夕飯美味かった。次も期待してるからな」
「明後日も上手に作れるように頑張ります」
やっぱり不安そうな顔するまりやに、可笑しくて笑いながら洗いものを済ませる。
「風呂、まりやが先に入る?」
ちょうどいいタイミングで風呂が沸き、最近2番目に入っていたまりやに先に入るように促す。
「いいの? じゃあ、今日は先に入ろうかな」
「それとも……」
言いかけてそこで言葉を切った俺をまりやが不思議そうに見つめてくる。