溺愛王子とヒミツな同居
聞きなれないあだ名に、谷山君は目を丸くして自分のことか指さし問う。
「あんた以外に誰がいんの。
何? あたしが付けたあだ名に何か文句あんの?
勝負事なら負けない自信あるけど、このあたしと勝負するっての?」
半ば喧嘩腰の栞の言い方に、谷山君の引きつる顔が目に入る。
栞が谷山君を敵視する理由はただ一つ。
小さい頃の私をイジめてたクソ生意気なガキんちょだから、らしい。
「あーあ、祥吾お前……何やったの?
米ちゃんにこんだけ敵視されるって相当だよ」
「俺は何もしてないって!
ていうか、タニーとか恥ずかしいからやめてくれない?」
「ハイ、決定。あんたは今日からタニー。
よろしく、タニー」
栞が決定と言ったら、これは飽きない限りは絶対の決定事項。
宮内君に続き、可哀相なあだ名をつけられて、呆然としていた。
「んで、祥吾は女子2人を相手に何を絡んでたわけよ?」
「絡んでたわけじゃ。ただ、2人が遊びに行くって言うから、俺も一緒に行っていいか交渉してただけで」
そう答えた谷山君から一瞬だけ目を逸らして、宮内君は大翔君とアイコンタクトを交わす。
そして、うーんと小さく唸ったあとポンッと何かをひらめいたように手のひらを叩いた。