溺愛王子とヒミツな同居



俯いてる間に、ジリジリと距離を詰められていることに気付かなかった。



「そういう態度……取られるのって、気になるんだけど。

ねぇ、なんで何も喋らないの? ヒロとはあんなに嬉しそうに話してるのに」



肩を掴まれて無理矢理に顔を上げさせられる。



そこで初めて、谷山君が私のすぐ傍まで来てることに気付いた。



「は、離して……っ」



それだけ言うのが精一杯で、また口をつぐんでしまう。



「まりやって、そういうとこ昔から全然変わってないんだね。

……ヒロが好きなことも、ヒロしか見てないことも、俺へのそういう怯えたような態度も」



後に言われた言葉は、私の耳に届かないくらいか細いもので、掴まれていた肩から手が離れた瞬間に大翔君が戻ってきた。



大翔君の姿を見ただけで、ホッと安心した私は緊張しきった体から力を抜く。



「意外に遅かったじゃん。何してたの?」



「ドリンク取りに行った光に捕まった。あいつ数人の女子大生にナンパされてて、俺まで巻き込みやがって……。

上手く巻いてきたけど、いい迷惑だっての。米倉も一緒になって冷やかしてくるし、参ったよ」



はぁ……っと大きな息を吐いて、私と谷山君の間に座る。



大翔君は黙ってても女の子の方から寄ってくるんだよね。



モテるってわかってたはずなのに、こういう話を聞くとチクンと胸が痛む。



「ヒロのモテ方はハンパじゃないからね。

普通それだけモテたら光みたいになりそうなのに、そうなるどころか寄ってくる女には全く興味ないんだから、ほんっと困ったもんだね」


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