溺愛王子とヒミツな同居



人通りが少なく、見慣れた風景に変わった頃、肩に置いたままだった大翔君の手に力が込められた。



それに顔をあげると、真っ直ぐに私を見下ろす大翔君の目と合った。



「大翔……君……?」



「悪かった。祥吾のこと、気にしてたのに2人きりにして」



「大丈夫。何かされたわけじゃないから」



大翔君のせいでもないのに、胸が締め付けられる思いがした。



何もなかったわけじゃないけど、ただ1人で不安で寂しかっただけ……そう、言えたらいいのに。



「何かなんてあったら……困るんだよ」



聞いたことのない苦しげな声と同時に、私の体は温かい腕の中に包まれた。



何が起きたのか、すぐには理解できなかった。



目の前には大翔君がいて、大翔君の体温と匂いと鼓動の音……それが私を安心感で満たしてくれるのがわかるだけだった。



抱きしめられてるってちゃんと頭で理解したのはその後すぐで、そんな経験初めてだったからどうしていいのかわからなくなってしまった。



「ごめんな。苦しかった?」



しばらく黙ったまま抱きしめられていると、大翔君の温もりが風と共に離れていく。


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