溺愛王子とヒミツな同居
電車に乗って約20分。
動物園の最寄駅の壁に描かれている可愛らしい動物たちの絵を見ながら、さらに楽しみが高まってくる。
週末ということもあり、家族連れやカップル、それに仲の良い友達同士で来てる人たちで駅から混雑し始めていた。
そういえば……谷山君の姿が見えないけど、もう先に行っちゃったのかな。
ふと、そんなことを思った時、右手に温もりを感じる。
不思議に思って右手に視線を落としながら見上げると、大翔君と目が合った。
「お前は小さいから、はぐれないようにな」
小さい頃に何度も手なんて握ってるはずなのに、大きくて私の手をしっかりと包んでくれる手は、あの頃と全然違った。
理由が何だったとしても、大翔君からこうして手を繋いでくれることが嬉しくて、つい緩んでしまいそうになる顔を何とか引き締めて、照れを隠してつい素直じゃない言葉を並べてしまう。
「小さいって、もう子供じゃないのに?」
「そういう意味じゃない。俺より小さいからってこと。それに……」
言いかけて、私の顔を見たかと思えば、
「何でもない。とにかく、今日は嫌だって言っても離す気ないから」
何も意識せずにそんなことを口にしたんだろうけど、私の胸は一気に心拍数を上げていく。
どんな意味で言ったのかなんて私にはわからない。
でも、そんなことをサラッと言っちゃうなんて……ズルイっ。