溺愛王子とヒミツな同居



この子、誰……?



髪と同じ瞳の色で、目は少しつり目がちだけど、意志が強そうな印象を受けた。



誰が見ても、可愛い女の子。



「……有紗」



大翔君の口から放たれたその名前に反応する前に、私の目の前を横切ってその子は大翔君に抱き着いた。



「ヒロ兄! 会いたかったぁ」



その光景を目の当たりにして、ピクリとも動けなかった。



聞きたいことはたくさんあるのに、目の前で繰り広げられていることにただ呆然とするしかなかった。



「とにかく離れろ。子供のくせにいきなりこういうことするな。

色気づくなんて10年早いんだよ、マセガキ」



いとも簡単に抱き着いた彼女の体をグイッと引き剥がした大翔君にふくれっ面を返している。



「また子供扱い! ヒロ兄はいつになったらあたしを女として見てくれるの?」



「お前はそういう言葉をどこから覚えてくるんだ。

漫画やアニメの見すぎだっての。

大体なぁ、従兄妹なのにそんな目で見るとかあり得ないだろ。妹みたいにしか思ってねーし」



呆れた顔でやれやれと首を振る大翔君の言葉で、ハッと我に返る。



今……従兄妹って……言ったよね……?



じゃあ、この子はもしかして谷山君の妹さん?


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