溺愛王子とヒミツな同居
「そういうハッキリしない態度、昔から思ってたけど……ムカつくんだよね。
いつだって……ヒロしか……」
「え……?」
抑揚のない冷たい声が周囲の賑やかな声に混じって聞こえた。
それに驚いて振り向くと、何事もなかったようにいつも通りの谷山君がいた。
今の、気のせい……?
妙な違和感を覚えながら、前を歩く2人に再び視線を戻す。
大翔君が女の子と腕を組んで歩いてるところ、初めて見た。
その相手が従兄妹だったとしても、あんまり見たくなかったな……。
こんなこと思っちゃいけないのに、今の私はすごく嫌な奴だよ。
それから、帰り道に寄ったカフェでも、その後のショッピングでも、何一つ楽しいと思うことができなかった。
何度もこんなんじゃダメだと、自分の心に言い聞かせても楽しむことなんて1ミリもできなかった。
「あ〜、楽しかった! ヒロ兄とこんなに長く居られたの久しぶりだし、嬉しかった」
「お陰で俺はいい迷惑だ。お前はもっと空気読めよ。
悠二に今日のこと報告するからな」
ぐったりする大翔君に、急に慌てだした有紗さんがダメダメと首を横に振る。
「悠兄ちゃんには言っちゃダメ! ヒロ兄に会いにきたってバレたら……めちゃくちゃ怒られる!!
祥兄からも言わないようにお願いしてよ」