溺愛王子とヒミツな同居
★大事なもの‐大翔side‐
「で、お前らは一体何しにきたわけ」
イライラが収まらない俺は、静かにそう切り出した。
まりやの喜ぶ顔が見たくて、動物園に誘ったのにこの2人に邪魔をされて全てが台無しだ。
「あたしは悪くないもん。祥兄が全部悪いんだからね!」
「は? ヒロに会いたいって騒いでたのはお前だろ?
せっかく会わせてやったのにありがたく思えよ」
「会いたいとは言ったけど、2人きりがよかった。まりやさんが一緒なんて聞いてなかったもん」
「俺だって2人きりなんて一言も言ってないし。
有紗が勝手に勘違いしたんだろ」
俺が質問してるのに、それを無視して2人で口喧嘩し始める始末。
それをしばらく見てたけど、いつまでたっても終わらなそうな平行線の言い争いに、怒りを通り越して呆れた溜め息が出る。
「ヒロ兄が呆れてるじゃん! 全部祥兄のせいだよ! どうしてくれるの!!」
「俺のせいばっかにするなよ。
大体、努力もせずにヒロに好きになってもらいたいっていう、その軽い考え方を改めさせてやろうと思った俺の優しい心に感謝してほしいもんだね」
「いい加減にしろ、2人とも。
言い争いする前に俺とまりやに言うことがあるだろ」
静かに放った俺の声に2人は黙りこみ、罰の悪そうな顔をして、渋々俺たちに謝った。
「ごめんなさい」
少し距離を空けて俺たちを不安そうに見つめるまりやに近付き、優しく髪を撫でる。
「ごめんな。俺から誘ったのにこんなことになって」