溺愛王子とヒミツな同居
子供の言うことだからとずっと相手もせずに、有紗のことを適当に交わしてきた。
他に好きな奴でもできれば、俺には見向きもしなくなる。
その程度の気持ちだってずっと思ってた。
見た目はまだ子供でも、心は……気持ちは見た目に反して成長してるんだよな……。
この想いを誰かに向かって口にすることは初めてで、好きな奴が傍で聞いてると思うと告白してるわけでもないのに、妙な緊張感に襲われる。
それでも、ずっと俺に気持ちをぶつけてきた有紗には、ちゃんと俺なりに応えなきゃいけないと思った。
俺にとって、お前は可愛い従兄妹だし、その気持ちはこれからも変わらない。
「俺は有紗のこと、今もこれからもずっと可愛い従兄妹だと思ってる。
お前が俺を好きな気持ちが従兄妹に対してのものじゃなく、異性に対してのものだっていうのもずっとわかってた。
だけど、その気持ちには応えられない。俺には、ずっと想ってる奴がいるから。
あいつが笑うと嬉しくて、その笑顔をずっと俺が隣で守りたい。
こんなふうに想える相手はこの先もそいつ1人だけだから」
「……っ」
唇を噛みしめて、これ以上泣かないように必死に我慢してる有紗の頭をポンポンとしてやる。
「また子供扱いっ」
下を向いたまま、頭を撫でた俺に抗議の声が飛んでくる。
「女扱いしてほしいなんて、10年早いって言っただろ」
いつもみたいに言い返したけど、これが有紗に対する俺の精一杯の気持ちだから。
従兄妹だからってのはもちろんだけど、妹みたいに思ってきた有紗には幸せになってほしい。