溺愛王子とヒミツな同居
「まったく、あいつは……」
はぁっと深く溜め息をつくと、まりやに服の袖を掴まれる。
「何か疲れちゃったから、帰ろ?」
顔は笑っていたけど、無理してるように見えたその笑顔に妙な違和感を覚える。
「まりや……?」
「ん? 何?」
次に答えた時には、いつもと変わらないまりやで、さっきのは俺の思い過ごしだろうと思っていた。
けどそれは、思い過ごしなんかじゃなく、翌日からまりやの俺に対する態度にハッキリと現れた。
朝も妙に早起きして、先に学校に行くようになり、学校では初めからたくさん話す方じゃなかったけど、米倉や光に対する態度と俺に対する態度が明らかに違うことに気付いた。
最初は気のせいだろうと思い込んでたけど、夜も夕飯を済ませるとさっさと自分の部屋に逃げるように篭ってしまう。
話しかけても、すぐに目を逸らすし、避けられる理由が俺にはわからなかった。
何か怒らせるようなことをしたのかと自分でも考えてみたけど、1つも思い当たらない。
自分の考えすぎかと気にしないようにはしてたけど、そんな態度が1週間も続けば嫌でも完全に避けられてることに気付かされる。
何が原因か話を聞こうにも、まりやが相手にしてくれないんじゃ話にもならない。