溺愛王子とヒミツな同居
腕を伸ばして、目いっぱい背伸びをすると、俺の制服を掴んでどこにこんな力があるのかと驚かされるくらい、強くまりやの方に引っ張られる。
「……っ!!」
まりやに合わせて、少し体を屈めた俺の唇に柔らかいものが軽く触れる。
ほんの一瞬だったけど、触れたのはまりやの唇で、自分からこんな大胆なことをする奴だと思ってなかった俺は、目を見開いて驚くばかりだった。
「ごめんなさ……っ」
お前は何も悪くないのに……なんで、まりやが謝るんだよ。
声を押し殺して、子供みたいにポロポロと涙を流すまりやをそっと抱きしめた。
まだ泣き止む気配のないまりやを連れて、部屋の中に入る。
何から話せばいいのか気まずい雰囲気の中、さっきと違うのはまりやが俺にくっついたまま離れないこと。
俺の言うことを何一つ聞いてくれずにに、泣きながら抱き着いてくるまりやに、祥吾への怒りと自分への怒りが、さっきよりは落ち着いた気がした。