溺愛王子とヒミツな同居
当然、まりやが何も言えるはずもなく、俺の制服の裾をチョンと握ってくる。
大丈夫だと目で会話をして、頭をポンポンとしてやると、表情を和らげる。
「きゃー! 2人の世界よ! オレ、こんな甘い大翔の姿を初めて見る気がするんだけど。
祥吾がよく、激甘とか言ってるの聞いてたけど、あれマジだったのね。
そんなに優しくできるなら、まりやちゃんに向ける優しさの半分……いや3分の1くらいは、オレにお・す・そ・わ・けしてくれてもよくない?」
裏声を出して、1人やたらと騒ぐ光は、キャハと笑って気持ち悪い顔まで披露する。
米倉は、何でも楽しめる奴なんだろう、大爆笑してるし、まりやもクスクスと笑ってる。
そんな2人に対して俺と言えば……
「気色悪い声出すな。お前にやる糖分はねーんだよ。これは、まりや限定だ。
そんなに甘いのが欲しかったら、お前に尻尾振って寄ってくる女子たちに、菓子でもお裾分けしてもらえば?」
昨日の祥吾とのことで、朝から機嫌が悪い俺は、笑いもせずに光に冷たく言い放つ。
空気が読めるまりやと米倉は、先に教室に戻っていった。
「大翔、本当にオレが凍りついたらどうしてくれんの!?
マジで寒かったわ……」
大袈裟に騒ぐ光はいつも通りで、1人震えあがっていた。
「美しい彫刻として、語り継がれたら言うことないだろ」
「あ~! それもそうか。美しい……いい響きだよね。って!!
嬉しくも何ともないよ……。本当にオレには容赦ないんだから」
機嫌が悪いながらも、ちゃんと相手をした俺に文句を垂れる光は、完全に人がいなくなった屋上を見渡してから俺に向き直る。