溺愛王子とヒミツな同居
下を向いていた谷山君の視線が真っ直ぐに私を射抜くように捉える。
その視線を受け止めた私は、なぜか動けなかった。
微かに動く指で、隣にいる大翔君の服を握りしめる。
「俺だって、ずっと言わないでおこうって思ってた。
昔から2人が想いあってるの、ずっと近くで見てたから痛いほど知ってたし。
付き合うって聞いた時も、本当に祝福しようとしたよ、俺なりに。
でも……できなかった。
ヒロになら、たいていのことは全部譲ってきたけど、やっぱ昔から想ってきたこの気持ちだけは、隠すことなんてできない。
こっちに転校してきたのは、ヒロと光が同じ高校に進んで寂しかったからってのは本当。
でも、いちばんの理由は……お前に会いたかったんだよ、まりや」
切なげに細められた瞳に、何も言い返すことができない。
突然のことに、頭が真っ白で整理できずにいた。
「お前……やっぱりっ」
「大翔、落ち着けって。
祥吾、もういいだろ? こんな所で話すことじゃない。
まりやちゃんが可哀相だろ」
私たち3人の間に宮内君が入ってきてフォローに回ってくれるけど、私だけじゃなく、大翔君も谷山君もお互い睨みあったままで、その声は耳には届いてなかった。