溺愛王子とヒミツな同居
部屋の中にいることは気配でわかったけど、なんて言って声をかけたらいいのか、わからなくなった。
こんなこと思ったのは初めてで、まりやに声をかける時どうしたらいいかなんて、考えたこともなかったから。
あいつのことを想えば、あいつの顔を見れば、自然と言葉がいつも出ていた。
でも、今は……普通にまりやと話をする。
たったそれだけのことが、難しく感じられた。
ノックしかけた手を力なく下ろし、濡れたまま2階に上がってきたことにようやく気付いた俺は、とりあえずシャワーを浴びて、頭を冷やすことにした。