溺愛王子とヒミツな同居
消毒液の匂いがする保健室。
シワひとつない真っ白なベッドの上にそっとまりやを下ろすと、苦しそうに息をするまりやの顔が目に入って、もっと俺が早く気付いていればと
心の中で、まりやに何度も「ごめん」と謝ることしかできなかった。
ピピッと小さく電子音が鳴り、ベッドの脇にいた先生が体温計をまりやの体から取り出す。
「38度2分……風邪みたいね。
熱が高いから、とりあえず氷枕で冷やすけど、保護者の方に連絡つくかしら」
先生が氷枕と氷水の入った洗面器を用意しながら、俺に聞いてくる。
「藤沢さんのご両親は、出張中で、今は家に誰もいないです」
「あら、松坂君は彼女のことよく知ってるのね?」
不思議そうな顔をする先生から、氷水の入った洗面器を受け取ってタオルを絞ると、まりやの額に乗せる。
それだけで、苦しそうにしてたまりやの表情がほんの少しだけ和らいだような気がする。
「彼女とは、幼なじみなんです」
「そうなの。だからよく知ってるのね。
じゃあ、とりあえず落ち着くまで保健室で預かるから、松坂君は一度教室に戻りなさい」