溺愛王子とヒミツな同居
近付いていくたびに、ハッキリと聞こえてくる声。
安心できる大好きな人の声と
もう1人……。
あれは、谷山君の声……?
口喧嘩してるようにも聞こえる2人に気が焦り、あと数段で下りきるというところで、履いていたスリッパが引っ掛かり、体が傾く。
あ……落ちる……。
そう頭ではわかっていても、熱がある体が言うことを聞いてくれるはずもなく、自分が落ちるという感覚がスローモーションのように見える。
痛みに備えて、ぎゅっと目を閉じた。
「……まりや!」
ドサッという衝撃音とともに、温かくて力強い腕に包まれる。
痛いという感覚はいつまでたっても私の体に襲ってくることはなく、閉じていた目を恐る恐る開けた。