溺愛王子とヒミツな同居



「その頃の俺は、その気持ちが何なのかわかってなかったんだ。

その感情が“好き”っていう名前だって知ったのは、ヒロに言われた一言だった」



初めて知る谷山君だけが覚えてる思い出。



聞いても思い出すことはできないけど、そんな無邪気な頃もあったんだと思うと少しだけ心が温かくなる。



「小学生になった頃、ヒロに言われたんだ。
『お前は、まりやちゃんのこと好きなの』って。

聞かれた俺は、そんなことわかるはずなかったよ。
だけどヒロは、その時にはもうまりやのことをちゃんと女の子として意識してたんだ。

それに……まりやも。
好きの意味をちゃんと理解してから、すぐに2人が想い合ってるってわかった。

俺だけ置いてきぼりにされて、それが寂しくて、ヒロに向けてる気持ちを何とか自分に向けさせたいってそう思うたびに、いつの間にかまりやを泣かせるようになってた。

気持ちばっか焦って空回りして、ただ笑った顔を見たかっただけなのに、それができるのはいつもヒロで悔しかった」



好きだから意地悪してたなんて全然知らなかった私は、大翔君を見た。



当然、彼も知らないだろうと思ってたけど、横顔から大翔君だけは、谷山君の気持ちを知ってたんだと気付く。



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