溺愛王子とヒミツな同居
渋々了承した俺に、嘘泣きをパッとやめた母さんは、もう笑っていた。
「買い付けに行くのは本当だけど、もう1人はさすがにキツいわよね」
完全にハメられた……。
わかってたのに、母さんの手の上でコロコロ転がされてるかと思うと、ムカつく。
ムスッとした俺に構わずひらめいた母さんは、俺の腕を急に引っ張った。
「そうと決まれば、早速まりやちゃんに伝えなきゃ!」
「は?」
「大翔もチャンス到来なんだから、この期間に絶対まりやちゃんをゲットするのよ!」
グッと親指を立てられ、まんまと母さんの思惑に乗せられた俺は、そのまま隣の藤沢家に連れていかれた。
「ちょっ……マジでやめろって!
さっきの話は、まりやが了承しないと」
「往生際が悪いわね! もう決定したことをグチグチ言わない!」
俺に説教しながら、母さんの右手の人差し指は、ちゃっかりインターホンを押していた。
――ピーンポーン。
こんな強引な性格の母さんのどこが良かったんだと、ここにはいない親父に文句を言いたくなってくる。
だが、この後、強引なのは俺の母さんだけじゃなかったということを、俺は身を持って知ることなる。