溺愛王子とヒミツな同居
玄関には、既に小さなローファーがきちんと揃えて置いてあった。
まりやはもう帰ってきてるんだな。
小せぇ足……。
思わず、ふ……っと笑みが零れた。
リビングからは、賑やかに話をする母さん達の声が聞こえてきて、ゆっくりとそっちへ足を進める。
俺のことをただのクラスメイトだと思ってるまりやは、自分の家に俺がいたらどんな顔するんだろうか。
俺の名前を聞いても、思い出す素振りもなかったし、
正直、あれはキツかったな……。
廊下側のリビングのドア横の壁に寄り掛かり、中から聞こえてくる会話に耳を傾ける。
さっきは了承したけど、やっぱ俺のことを覚えてないまりやと2人で暮らすのは……。
断るべきだったと後悔している俺の耳に、まりやの期待を込めた弾んだ声が聞こえてきた。
「大くんも戻ってきてるんですか!?」
大くん……?
妙に懐かしく感じるその名前。