溺愛王子とヒミツな同居
無意識に止めていた息を、深くゆっくりと吐き出した。
そういうことか……。
だから、俺が自分から名乗った時もあんな顔してたのか。
まさか、俺の名前を間違って記憶してたなんて
なんつーか、すっげぇまりやらしい。
相変わらずのおっちょこちょいな幼なじみの変わらなさに、ホッとしたのと同時に、おかしくて自然な笑みが漏れる。
「おばさん、ごめんなさい……私……」
母さんが話してる後ろに立ち、申し訳なさそうに謝るまりやの姿を捉える。
「いいのよ。間違いは誰にでもあるし、それに……謝るなら私じゃなくて、本人にどうぞ!」
うつむいていたまりやの顔が、段々と俺の姿をその瞳に映すように上がってくる。
真っ直ぐに見つめる俺と完全に目が合った。
「松坂……くん……どうして?」
俺がここにいることにまったく気付かなかったまりやは、大きな瞳を更に見開く。