EGOIST
『ひぃ~っくしゅん!!』

「ユメ、風邪か?」

『いやぁ、わかんね……』

こりゃ、真紅がどっかで噂してんな。
今朝の柚への発言がマズかったかな。

それか、全く関係ない奴か?

まぁ、自分の事をいい人間だとは思ってないから噂があっても仕方ないけど。


鼻を啜りながら、ふと窓の外を見る。

草木の繁った中庭の奥にある女子部の校舎。

そこから女の子が2人で男子部に向かっている様子が見えた。


え……?
あの姿は……

『柚?』

何で柚がここに?

いてもたってもいられなくて、教室を飛び出し転がるように階段を降りる。

真紅の野郎!
こんなに近くにいたなら、一言くらい言えっつの!

俺だって、どうして今まで気付かなかったんだよ……

あんなに会いたくて、ずっと探してたのに。

ホストの格好では、会いたくなかったのに。

でも仕方ない。
真紅に、どうこうされる前に会わなきゃ。


と、突然、目の前に人影が飛び出した。

『危ねぇッ……って真紅?』

『あ、涼じゃん。 ちょうど良かった、あんさ……『悪いけど用件は後!』

俺は真紅を振り切るように立ち去る。
今はそれどころじゃない。



『何だよあいつ。 せっかく多恵ちゃんが会いに来たのに』

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