EGOIST
真紅を振り切った後も夢中で走り、ようやく中庭の女子の背中に追い付いた。

が、しかし……

『……多恵……』

時すでに遅し。
柚の姿はどこにもなかった。

『柚は?』

『柚……? 真紅くんと手分けして涼を探しに』

『真紅?』

だからあいつ、俺に声かけて……
つか、そうならそうと手短に言えよ!

『あの、涼くんにお願いがあるんだけど!』

『お願い?』

多恵はニコッと笑うと、俺の目の前にバッとスマホを差し出した。

何やら解らないキャラクターを象ったラインストーン。
元のカラーなんてわかりゃしない。

『すご……』

今時のギャルのスマホこんなんなってんのか?

『涼くんのID教えて!!』

『あ、ID!?』

『ほら! 昨日、聞き忘れちゃったから!』

早口に言う多恵の顔は真っ赤で、ついつい笑い出しそうになってしまう。

そうか。
そういう事ね。

『んじゃ交換条件。 ここに柚を呼んで』

『柚? 何で柚を?』

『会えばわかるからさ』

すこし意地悪かも知れない。
でも俺だって余裕ないんだよ。

今を逃したらいつ柚に会えるやら……
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