EGOIST
『大丈夫大丈夫! 凍司だって理解してくれるさ』

帰り道。
真紅が気楽そうに言った。

俺には、そうは思えない。
口止めに動くか、はたまた俺達が初めから働いてなかったように処理するか……

どっちかだな。

多恵と肩を並べて歩く柚をチラリと見て、思わず溜め息がでる。

……まだホストは止められないな。
「母さん」のためにも……


『あ、美里だ』

と、突然、柚が声を上げる。

指差す方向を見ると、そこには美里と……

『真紅、涼』

ずーん、と重苦しい空気を纏った凍司先輩が……

つか、あんたも見つかっとるんか。

『お前ら、制服を着てる時は気を付けろと、あれほど……』

『お、俺は偶然にも柚にバレただけで、涼がバラしたんだべ? 凍司の事とか……』

『えッ、俺!?』

ちょ、真紅!
話が違うじゃんよ!

『だって涼が凍司の名前出したんだろ?』

確かに先に名前を出したのは俺だ。
しかし、本名や年齢をバラしたのは真紅だろ⁉︎

せっこいじゃんよ~、こいつ!

半ば諦めて、謝ろうと頭を下げる。
それと同時だった。

『真紅、どう考えても真紅が悪い』

凍司先輩がそう言い放ったのは……

『何で俺!?』

『消去法だ。 涼が自ら進んでペラペラ話すわけないからな』

り、理不尽すぎる……

『どうせ「涼の責任」とか言ってお前がバラしたんだろう』

まぁ、合ってんだけどね?
さすが副会長様。

『でも同じ高校ならバレるのも時間の問題だって! 現に凍司だって美里ちゃんに見つかってんじゃん』

真紅は、悪びれる様子もなく、そう言い切った。

『そんなに都合悪いなら、俺クビでいいしね』

また始まった。
この2人が言い争うと終わらないんだよな……

ふぅっと1つ溜め息をつく。


『あの! 多恵、誰にも言わないよ? 約束する! だから喧嘩しないでよ』

しばらくして、多恵が宥めるように2人の間に入った。

『私達も黙ってる! だから何も心配しなくていいよ?』

続いて柚も手を挙げる。

仕方ない。
助け船を出すか。

『じゃあさ、口止め料に一つだけ何かするってどう?』

3人さえ黙っていてくれたら済むことだ。

『日曜までに、してほしい事考えといてよ』

ニッと笑みを見せ、俺は柚の頭を静かに撫でた……
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